理系脳をくすぐる「食欲」の解説本 食欲人‐EAT LIKE THE ANIMALS‐

生活

なんともセンセーショナルなタイトルとビビッドな色の表紙が目に飛び込んできた。

タイトルは「食欲人」である。「しょくよくにん?」「しょくよくじん?」聞き慣れない言葉であり読み方が分からないものの、何となく内容を推測することができるタイトルである。

本の帯を見てまた好奇心をそそられた。"「タンパク質欲」を満たすまで私たちはとまらない。“

常日頃疑問であった。
おなかがいっぱいになっても、「何か食べたい」と思うことを。
健康的な体形でいるために、健康的な食事を十分採ったにもかかわらず、満足感が得られないことを。

「よく噛んで食べましょう」「ゆっくり食べましょう」そうすると満腹信号が出て、ドカ食いを避けることができます。そのような説明は聞いたことがあったが、「タンパク質欲を満たす」という言葉を聞いたのは初めてであった。

本著は、科学者が膨大な実験とそこから得られたデータを元に、解を導く過程に触れた本である。

野生動物が摂取するタンパク質の量は、種別に一定のパーセンテージを保っているというのだ。人間も然りで、必要とするタンパク質量を得られるまで食べるのを止められないのだという。

つまり、炭水化物を中心とした食事を採った場合、炭水化物内から得られるタンパク量が少ないため、それだけたくさんの炭水化物を摂取することが必要になるのだという。

例えば実験において、ネコはタンパク質の総エネルギー比率が52%の餌を選ぶそうだ。これは、家ネコやオオカミの祖先を含む、野生の捕食動物に典型的な比率であるという。

そこでふと気づいたことがある。我が家のネコに、毎回2種類の固形の餌を混ぜて与えているのだが、いつも食べ残されている餌が同じなのである。2種類の餌の粒は同じくらい大きさであるが、形が違うのでどちらの餌が残されているのかが容易にわかるのだ。

いつも食べ残される餌のタンパク質の総エネルギー比率は31%であった。一方、好んで食べる餌のタンパク質の総エネルギー比率は36%であった。たった5%であるが、この本を読んでいると5%の差がいかに大きな差であるかがわかる。

もちろん、人間的に考えると「好み」ではないかとの説も否定できない。固さ、におい、味などが好みであった可能性はもちろん否定できないが、本著を読んだ後では「タンパク質比率説」を推したくなる。

さて、話を先に進めよう。

「長寿」に適した炭水化物とタンパク質の比率と「繁殖」に適した炭水化物とタンパク質の比率は、相反する実験結果が得られている。大変興味深い!

本著では実験によって環境の違いについてもアプローチしている。飼育下で、コントロールされた食餌を与えることによって、人工的に肥満を引き起こしたり、老化を遅らせたり、繁殖力を促進したり・・・。腸内微生物叢や免疫系をも調整可能になるという。

そこからも想像できるが、気が遠くなるような歴史の中で、遺伝子の突然変異なども影響し環境に適応する形に変化してきたのだろう。

本著は全体を通じて、実験から得られた結果をベースに展開されている。根拠を示されたい理系脳には大変満足感を与えるだろう。素人にも理解しやすいように、かみ砕いて説明されていることも好ましい。

「食欲」に悩まされている方にとって、科学的解決策が見つかるかもしれない。

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