テレビ電話の時代からビデオ通話の時代へ

今では多くの場面でテレビ電話とビデオ通話は同義語として扱われがちですが、ここで話題にしたいのは時代とともに変化してきた音声を届ける手段の「電話線を利用した電話」から「インターネットを経由した通話」への変化です。

2008年頃

筆者には海外を飛び回る家族がいます。

今でも国際電話をかけようと思うと高額な通話料が発生するため、ビジネスの場を除くと海外と国内との通話手段は、国際電話ではなくLINEなどのインターネットを経由した手段を選択することが多いでしょう。

2008年頃、海外にいる家族とのコミュニケーション手段は既にインターネットを経由した通話でしたが、その手段は多くありませんでした。筆者が利用していたのはSkypeです。当時、カメラ付きPCが出始めた時期であったため、USBで小型のカメラを接続し、PC上部に乗せていました。そのため、Skypeのインストール、設定、カメラの接続、音声とそれぞれの設定が必要でした。それなりに仕組みを分かっていないと、設定だけでウンザリしてしまいます。

そして、多くの場合、スムーズに通話はできませんでした。カメラが映らない、音声が途切れる、画面が固まる、音声が遅れる、切れる、そもそも繋がらない・・・その時その時で何らか設定に問題があったのかもしれませんが、多くの場合は、接続状況が不安定であったことが原因だったと思っています。そして、その接続状況の不安定さがこちらにあるのか、相手方にあるのかがわかりません。Wi-Fiが悪いのかと思い、LANをつないでみたり、画面だけオフにしてみたり、チェックするところは山ほどありました。

結果的に、多くの場合は疲労感が積もり、ろくにコミュニケーションをとれず気分が晴れない状態で通話を終了することになりました。

2012年頃

この頃になると、PCにカメラが標準装備されているものが多くなってきました。相手方の電波状態に左右されるものの、通話品質はだいぶ向上していました。

ただ、この頃になってもSkypeの設定や扱いは誰にでもできるような簡単なものではなかったため、扱い慣れない相手との通話は大変でした。まず相手にSkypeをインストールし、簡単な設定をさせなければなりません。

しかし、一度接続できると安定した通話ができていた印象があります。

2020年頃～

現代を生きる皆さんには説明が不要だと思いますが、急な外出自粛生活が始まり、半ば強制的に多くの人の生活が変化しました。その変化の一つとして、遠隔地同士のコミュニケーション手段としてオンライン会議システムの導入です。筆者の会社ではMicrosoft社のアプリの一つであるTeamsが導入されました。Zoomの利用が飛躍的に伸びました。ほかにもGoogle Meetも学校やビジネスの場面では多く使われています。その反面、Skypeはすっかり影を潜めた形になってしまいました。会社だけでなく、学校の授業すらオンラインで行われる時代が始まりました。

ただ、昔ほど煩雑ではないものの、それらオンライン会議システムのビデオ通話でも簡単な設定が必要であり、遠方に住む高齢の両親とのコミュニケーションには適しません。

より手軽なビデオ通話手段

これまで記載してきたこれらオンライン会議システムとは別に、2011年の東日本大震災を機に一気に利用が広まったといわれているのがLINEです。一部の人にしか手が出なかったスマートフォンが一般にも普及し始めた時期と同じころにLINEが出現したため、今や日本においてLINEは、誰もが利用しているといっても過言ではないほど普及率の高いアプリでしょう。

LINEは単なるチャット機能としてだけでなく、スタンプといわれる絵や文字で気持ちをより手軽に伝えることができ、堅苦しいやり取りを避けたい間柄ではとても利用しやすいツールです。そして、LINEには「受話器マークの音声通話」と「ビデオマークのビデオ通話」のボタンがあります。相手に向けてメッセージを送信する代わりに、そのボタンを押すだけで発信ができるのです。

これなら電話線の電話の時代を生きてきた高齢な両親にとっても、なじみがあり受け入れられやすいものでした。着信音が鳴ったら、ボタンをスライドして電話を受けるだけでよいのです。相手がビデオ通話をしてきたら、ボタンを横にスライドすると同時にスマートフォンの画面いっぱいに相手の顔が広がり、スピーカーから自動的に相手の声が聞こえます。何の設定もいりません。

現在

今や、オンライン会議システムやLINEなどのチャットアプリがとても多く存在します。海外とのやり取りが発生する場合には、相手国でも利用できるツールかどうかが問題となります。

知られた話の一例として、中国においてはZoomは使えますがLINEが使えません。余談ですが、中国ではLINEだけでなくGoogle、Facebook、X（Twitter）、Instagram、YouTube、Wikipediaなども規制されており、利用できません。

国によって普及している手段やアプリは異なります。中国でLINEとほぼ同じような使われ方をしているのがWeChatです。

とはいえ、VPNを経由することによってインターネットの国境をないものとすることもできます。つまり、中国でLINEを使いたければ、まず事前に契約したVPNに接続してからLINEアプリを起動すると使えます。LINEだけでなく、中国で制限されているサイトやアプリの利用が可能となります。

いずれも、昔のような複雑な設定はありません。事前に必要な対策を調べ装備しておくだけです。

ダイヤルアップ接続の時代から光回線の時代へ移り変わってから久しいですが、日々成長が続いていることを感謝と共に実感します。